妖精diary $'`b★+⌒'。*

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進め

もうすぐ子供が産まれる。

産まれてしまうともう二度とこの人は私のお腹には戻ってこない。
つわりを引き起こして規則正しく朝晩1回ずつ嘔吐させてくることも、寝ようとしている時に内側から肋骨をぐいぐい圧迫してくることもない。
そして私も、もうこの人と出会う前の私には戻ることができない。
妊娠がわかってからずっと「取り返しのつかなさ」と「未来へのものすごい志向性」を感じていた。その2つの感覚について、産休に入ってから読んだ「動的平衡3」(福岡伸一著)に繰り返し出てくる「エントロピーの増大」という言葉が表現としてとてもしっくりきた。
人1人の誕生は、物理的にも精神的にもとてつもないエントロピーの増大だ。
この人の存在が私だけでなく夫、親族、友達、仕事関係の人たち、さらには全く知らない人たちにまで何らかの影響を与えて、物質や意識の変化を生み、大袈裟に言うと世界がどんどん不可逆な状態になっていった。
 
不可逆で取り返しがつかない、ということは、裏を返せばものすごく未来への志向性が強いということでもある。
今、退路がガッツリ断たれた代わりに、進路が無数に広がっている。というか、道もない野原が広がっているような状態か。進み方も自分で考えなければならない。
私がそうであるように、産まれてくるこの人もどうしようもなく不可逆な状況に立たされる。
 
しかし思い返せば、これまでの人生において一度でも不可逆じゃなかったことなんてあるだろうか?
毎日少しずつ何かを選択し、その結果に向かって進み、1秒でも前の状態に戻ることは絶対にできない。
今までずっとそうだったし、これからもそう。
肉体や精神へのインパクトが大きいから今回強く感じただけで・・・
(「失敗しても挽回できる」という意味での「人生何度でもやり直せる」という考え方とは別の、物理的な変化の話です)
 
出産を終えたらかつてない大きさのエントロピーの増大が起こり、一時的にいろんな物事がぐちゃぐちゃになるだろう。
そして、しばらくすると何らかの秩序を作って収束させようとする動きをとることになるだろう。
だけどこの増大→収束の流れは実は日々繰り返されてきたことであり、人生の全てが不可逆であることは妊娠出産しようがしまいが変わらない。
常に変わり続けているという不変の状態があり、その中に落ち着ける秩序を作り出そうとする動き、それが動的平衡
 
動的平衡を保ちつつ、どんどんエントロピーが増大していく。生きているってそういうことだなと再認識できた。
どんな行動も発言も、取り返しがつかないし、反対に、周囲への影響が絶対にある。発したものは何か影響を生み、未来のあり方を変える。
 
つまり何が言いたいのかというと、
あなたの存在は周りの人を変え、物質を変化させ、世界全体をあなた以前/あなた以降で全く違うものに作り変えているとんでもない存在であるということを
産まれてくる子供に知らせたい。
人生は不可逆なエントロピーの増大だけど、あの頃に戻りたいなんて思う暇もないくらい素晴らしいものにどんどん出会って、先の方にさす光を求めて、遠い未来まで行ってきてほしい。
私はそれをなるべく長く見守っているつもりです。
 
会える時を楽しみにしています。